@mizumotokのブログ

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年金2,000万円不足のレポートは国民の生活視点の欠如

炎上した 人生100年時代、2000万円が不足が不足するというレポートを改めて読んでみました。

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書
「高齢社会における資産形成・管理」

そもそもが年金問題に焦点をあてたものでなく、資産運用を促すものだったのです。
人を突き動かすのに不安を煽るのは手法の一つで、年金不足問題で不安を煽ったわけですが、年金問題は政治的にセンシティブすぎました。野党やネット民にとっての格好の炎上材料となってしまいました。
金融庁に少し同情しますが、金融庁も政府の一員としての自覚が足りなかったのかなと思います。
今に限らず年金だけで暮らせた自体なんてないのですが、炎上しやすい時代でもありますし。

2,000万円不足の根拠

問題となった2,000万円不足はこの図から来ています。

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(出典)第 21 回市場ワーキング・グループ 厚生労働省資料

収入も年金給付に移行するなどで減少しているため、高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとなる。

月約5.5万円不足、90歳まで生きるとすると、

5.5万円×12ヶ月×30年 = 約2,000円必要

ということになります。

このロジックはツッコミどころ満載ですが、まず実支出が平均であって、必ずしも実態を表していないということです。
住んでいる地域によっても全然違うでしょう。

さらに厚労省の資料をよく見ると、高齢夫婦無職世帯の平均貯蓄額は2,484万円ということです。
平均なので、単純に考えると半分は問題なしということでしょうか。

90歳まで生きるのは約4分の1

この計算は90歳まで生きることを前提としていますが、金融庁の資料には以下のように書かれています。

冒頭でも述べたとおり、日本人は年々長寿化している。1950 年頃の男性の平均寿命は約 60 歳であったが、現在は約 81 歳まで伸びている。現在60 歳の人の約4分の1が 95 歳まで生きるという試算もあり、まさに「人生 100 年時代」を迎えようとしていることが統計からも確認できる。

2,000万円問題に該当するのは、無職世帯の夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦がそろって90歳まで生きる場合であり、単純計算でも8分の1(2,000万円持っていない人1/2 × 90歳まで生きる人1/4)です。

65歳以上の50%以上が就業

無職世帯という条件もありますが、高齢者の就労状況にも言及があります。

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(出所)総務省統計局「労働力調査」(基本集計)
65歳以上は50%以上が就業しています。

2,000万円不足するという世帯は本当に限られたモデル世帯で、万が一不足して生活に困窮しても生活保護制度もあります。今回のレポートには生活保護制度については触れていません。

ミクロな視点、国民一人一人の生活が見えていない

結局、平均というかマクロの数字はよく見ていますが、ミクロの国民一人一人の顔が全く見えていないなということが感じられます。
営業でも新規事業提案でもマクロの動向はおさえつつも、目の前のお客さん、最初の一人のお客さんにとってメリットがあるかどうか、つまりミクロの視点を持つことは欠かせません。
国は霞が関と永田町の中にあって、現場を持っていませんので、ミクロの視点を持つことは難しく、中央集権的な発想の限界なのかなと感じた出来事でした。

年金問題は炎上しやすく、国会議員は特に与党は議論したがらないようですが、国民が徒に不安を持ち続けているのも事実です。実際、マクロの数字では足りません。
ミクロの視点を持ち、どのようなケースで年金「だけ」では足りないのか、足りない人たちに対するケア(生活保護制度も含めたセーフティネット)は何なのかをもっとオープンに議論して欲しいです。

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