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仮想通貨界の古典「仮想通貨革命-ビットコインは始まりにすぎない」

ビットコインはテクノロジーによって、これまでの通貨のあり方の一石を投じました。これまでの通貨や決済には国や銀行のような信頼できる管理者がいて成り立っていましたが、その管理者をなくしてしまおうという「革命」が起きたのです。このムーブメントが徐々に広がり、一般の人の間でも投機対象として盛り上がってきました。

投機対象としてとらえられることの多いビットコインですが、技術的な仕組みと経済的な仕組みの両面から理解するのにおすすめなのが 野口悠紀雄『仮想通貨革命』です。

2014年の本ですが、仮想通貨関連書籍としては古く、しかし全く色あせていない、まさに古典です。

仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない

仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない

第1章 通貨革命が始まった
 1 突然登場した新通貨
 2 マウントゴックス破綻の教訓
 3 金融機関はどう見ているか
 4 急速に広がる実生活での利用
第2章 きわめて斬新なビットコインの仕組み
 1 電子署名ビットコインを送る
 2 ブロックチェーンに取引を記録する
 3 ビットコインの中核は「プルーフ・オブ・ワーク」
 4 ビザンチン将軍問題
 5 ビットコイン電子マネーとはまったく違う
第3章 ビットコインに続くもの
 1 アルトコインズはビットコインのクローン
 2 楽しいコンセプトのリップル
 3 ケニアで起こった通貨革命
第4章 現代の通貨はどこに問題があるか
 1 「通貨」とは何か
 2 部分準備体制下の預金価値は信用できるか
 3 前時代的な国際送金の現状
第5章 通貨革命は社会をどう変えるか
 1 仮想通貨最前線を探る
 2 新しい技術の意義は過小評価される
 3 仮想通貨と国家の緊張関係
 4 われわれの仕事はどう変わるか
 5 分散市場と自動化企業が作る未来社
 6 ブロックチェーンでサイバー空間の信頼関係を築く
補論 公開鍵暗号電子署名
 1 モジュラ演算
 2 ディフィー=ヘルマン鍵共有
 3 RSA暗号
 4 電子署名
 5 楕円曲線暗号とECDSA署名
 6 分散市場の仕組みと自動化された通信社

目次を見ても分かる通り、技術的な仕組み、現在の通貨の問題点、社会へのインパクトが網羅されています。

ビットコインの技術的な仕組みとしては、一文で要約されています。

ビットコインは、P2Pネットワークによるプルーフ・オブ・ワークでブロックチェーンを維持することによって運営されている

この一文が理解できるくらいには、技術的なバックグラウンドがない人でも分かるように、技術的関心がある人でも満足できるように丁寧に説明されています。

プルーフ・オブ・ワーク」というのは一見して無駄なエネルギー(電力)を費やしているように見えて、しかしそれが信頼の土台になるのですが、ここは技術的な側面だけを見ているとなかなか理解できないのです。ときには批判(エネルギーの無駄使い)の対象にもなります。
人間社会における類似の例をあげて、納得のいく解説をしてくれます。例えば、錠前にお金をかけたり、紙幣に精巧な透かしを入れるのコストをかけることです。悪い人がいない社会だったらそれらは一見して無駄なことですよね。

プルーフ・オブ・ワークは、特定の対象に対するアクセスを困難にするために、これまでもさまざな場合に使われてきた手法だ。日本人であれば、「竹取物語」が思い浮かぶ。かぐや姫が5人の公達に、仏の御石の鉢など手に入れるのが非常に困難なものを持ってくるようにと求めたが、これはプルーフ・オブ・ワークである。アメリカ大統領選挙でのプライマリー・エレクション(予備選挙)もプルーフ・オブ・ワークの一種と考えることができよう。

技術的なことだけでなく、「通貨」に焦点を当てて、現代の通貨の問題点、実社会での広がり、これから社会がどう変わるかの予測など、社会的な側面も分かりやすいです。

副題は「ビットコインは始まりにすぎない」です。
ビットコインという一つの仮想通貨はどうなるかわからないですが、ビットコインから始まった仮想通貨の発展が世の中を変える力を秘めているのです。

ビットコインについてはさまざまな評価があり、その中には否定的なものもある。ただ、否定の根拠は、価格変動など、比較的簡単に克服できる問題である。
その反面で、「ブロックチェーン」という仕組みの革新性と発展可能性は、多くの人が認める。そこで、これを拡張する試みが数多く行なわれている。これからわかるのは「ビットコインが仮想通貨の最終的な形ではない」ということである。

私はビットコイン自体は、今後も基軸通貨として残ると思います。通貨として扱われるかどうかは、テクノロジーの優越よりも、結局のところみながそれを通貨と認めるかどうかです。ブロックチェーンによる信頼がベースにあり、圧倒的な認知度を誇り、使用できる場所も多いのは、やはりビットコインです。

テクノロジーで未来が変わっていくのが想像できて、わくわくしながら読み進められます。

Non sire,
ce n'est pas une révolte,
c'est une révolution.
Duc de la Rochefoucauld-Liancourt


いいえ、陛下。
これは反乱ではありませぬ。
これは革命です。
ラ・ロシュフーコー・リアンクール公爵

仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない

仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない